STUDIO KAI 櫂

『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』 藤本さとる(第9話 絵コンテ、演出、作画監督、原画) インタビュー

 目覚めるとMMORPGで自身が使用していたゲームキャラの姿のまま、異世界に放り出されていた「アーク」。その姿は、見た目が鎧、中身が全身骨格という”骸骨騎士”であった。
 ──正体がバレたら、モンスターと勘違いされて討伐対象になりかねない!? アークは目立たないよう傭兵として過ごすことを決意する。だが、彼は目の前の悪事を捨て置けるような男ではなかった!
 現在放送中のTVアニメ『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』。今回は第9話で絵コンテ、演出、作画監督、原画を担当した藤本さとるに話を聞いた。



2022年6月3日(金)

●公式サイト
https://skeleton-knight.com/


ずっと机にカットが置いてある

――藤本さんは、第9話で、絵コンテ、演出、作画監督、原画を担当されています。最初から最後までほとんど携わっていることになりますが、こういった制作法のメリットはどこにあるのでしょうか。
藤本 僕自身が全部をやろうとした理由は、自分の体力を図ろうとしたからなんですよね。今の自分に、どれくらいのことができるのかなと。スケジュールはコンテ以降5ヶ月強くらいで上げていると思うので、制作進行としては相当楽だったのではないかなと。
――それくらいのスケジュール感で、さらにお一人で回されていることを考えれば、確かにそうですよね。
藤本 制作進行としては、逆に動くことがないからつまらないかもしれないですね(笑)。レイアウトがあがったら、原画をやるまで僕の机にずっとそのカットが置いてある状況なんですよ。
――不思議な光景ですね(笑)。
藤本 ほかのところに持っていく必要がないですからね(笑)。

一人原画をやろうと思っていた

――第9話の内容についてはどのようにお感じになりましたか。
藤本 いい回をもらったなと。原作や脚本を損なわないように頑張ろうと思っていましたね。とくに助けられなかった獣人たちを火葬して、天に送るようなところは……「これは相当ちゃんとやらないとな」と思いました。絵コンテも、あのシーンから逆算で考えていったんですよね。まあ、そこの原画は僕じゃないんですけど……(笑)。
――そうだったんですね。
藤本 すごくいいシーンだと思って、後回しにしちゃってたんですよね。ちゃんとやろうと思っていたから……。もともと一人原画をやろうと思っていたのですが、そこは湯舟(正博)さんが手伝ってくれたんですよ。それがねえ。本当にいい! そういう芝居を描いてくれて、すごい人だなと。あの原画をいただいたときに「よし!」と思ってね。これでこの回はよくなるぞと確信したんです。
――なるほど。ところで、少し気になったのですが、一人原画をやろうとされていたのであれば、相当原画数をやられているんですか。
藤本 そうです。300くらいはやれたんですけど。
――じゃあもう大半の原画を藤本さんが描いてらっしゃるんですね。
藤本 ただ、30カットくらいは他の方に拾ってもらったんですよ。全部やりたかったんですけどね……体力が……。
――いや、それでも相当な量だと思いますが。
藤本 寄る年並には勝てませんね(笑)。

しっとりとした日常芝居を

――アクションもかなり多い話数でしたが、この点でのご苦労などありましたか。
藤本 動けばいいって話でもないよなとは思っていました。とくに先程お話したお葬式みたいなシーンは、動いても仕方ないですしね。それと他の方にお願いした30カットのうち10カットくらいはアクションパートだったんです。だから、かなり手伝ってもらったんですよね。アリアンの剣から炎が出るカットは小畑(賢)さんですが、見事でしたね。あとは阿蒜(晃士)さんにもお願いしました。
――なるほど。藤本さんというと、アクションもお得意という印象があるのですが。
藤本 ううん。じつは僕、アクション要素をそんなに持っている人間じゃないんです。
――そうなんですか? しかし参加作品を見る限りはそう思えないのですが。
藤本 たしかにやってきたキャリアとしては、アクションアニメも多いのですが、じつはしっとりした日常芝居が好きなんですよ(笑)。「ARIA」シリーズや「たまゆら」とか、そういうゆったりした作品が向いているんです。「(戦姫絶唱)シンフォギア」シリーズをやったときは、好きな人がやったほうがいいだろうと、(自分とは別に)アクションディレクターを立ててもらったぐらいで。
――それは意外です。ではそういう意味でも、先程お話されていたお葬式のシーンに惹かれたのでしょうか。
藤本 そうなんです。ああいうところがあったから、自分の範疇でなんとかできると思ったんですよ。
――あのシーンで工夫されたところはありますか。
藤本 先んじて亡骸を見せておいて状況説明をしたうえで、その後火葬するところは見せないようにしました。カメラワークで視聴者の意識をそちらに向けないようにしたつもりです。
――確かに、あそこは美しさも感じるシーンですからね。アクションよりも、日常芝居のほうがカメラワークのこだわりが強いのですか。
藤本 そうですね。心情で画角を考えるようにしていました。Aパートはかなりそれをやったつもりですね。場面が転じたら画角を倒したり、閉塞感を感じたら埋めてみたりとそういうことをやっています。昔教わったことを実行しているだけですけどね。

絵コンテを変えながら

――ほかにお気に入りのシーンはありますか。
藤本 ゴエモンとアークがやりあっているのは気に入っていますね。あのあたりで尺をくったんで、本当はあんなことやっている場合じゃないんですけど(笑)。シナリオでも力比べするとあったので、こんな感じでやってみようかと。
――楽しいシーンになっていましたね。
藤本 最初にシナリオをもらって、ふっと最初に思いついたことは全部やった感じです。足しすぎるとダメなんで、こんなことをやろうと2案だけ入れて。それがお葬式のシーンと力比べのシーンだったんですよね。
――Bパートについてはいかがですか。
藤本 ラスト近くの会話劇はもうちょっと凝りたいところもあったのですが……。最後は時間がないこともあって、絵コンテどおりにやってしまったのが、少し後悔しているところです(苦笑)。
――なるほど。ご自身のコンテだから、勝手に変えてもある程度大丈夫なんですね。
藤本 はい。バリバリ変えていました。基本コンテって設計図なので、頭とお尻の絵だけあってればいいんです(笑)。演出の邪魔さえしなければ。
――そもそも、藤本さんが絵コンテまでやられるのは珍しいですよね。
藤本 オープニング、特典、PV、表に出ない作品などではやっていたのですが、TVシリーズで30分まるごとは初めてかもしれませんね。
――演出の先生にあたるような方はいらっしゃったんですか。
藤本 玉川(達文)【※1】さんですかね。机が隣だったんですよ。「シンフォギア」のときもその前も、ずっと演出の話をしていました。あとは、安田(賢司)【※2】さんですね。初コンテは安田さんにチェックしていただいたんです。ロジックの人で、わかりやすかったですね。逆に玉川さんの話って、全然理解できないんです(笑)。難しすぎるんですよ。あの人は本物の天才だったから……。僕があの世に行ったら、もう一回聞きにいこうと思います。

【※1】玉川達文(2008年9月以降は伊藤姓)はアニメーター、監督、演出家。監督としての代表作に「しゅごキャラ!!! どっきどき」「戦姫絶唱シンフォギア」がある。2020年5月に他界。

【※2】安田賢司は監督、演出家。監督としての代表作に「しゅごキャラ!! どきっ」「異国迷路のクロワーゼ」がある。

作品が好きになる方法

――先程、今回は力試しをしてみるつもりだったとおっしゃっていましたが、実際やってみていかがでしたか。
藤本 もうちょっとできるかなと思っていたんですけどね。やっぱり一人原画みたいなことは三十前にやったほうがいいなと思いました。体力があるうちにやらないと、僕みたいに歳を言い訳にしちゃうから(笑)。言い訳が効かないうちにやったほうが、自信がつきますよ。あと、こういうことをすると作品が好きになるんですよ。
――そうなのですか。
藤本 はい。めちゃめちゃ好きになります。一人原画でなくても、一人で作監をやれば、キャラクターにもっと思い入れがわきます。やる気も出るので、「ひとりでやりきるといいぞ」とは、若い方に言っておきたいです。いい思い出にもなりますから。

2022年5月18日 スタジオKAI会議室にて



『骸骨騎士様、只今異世界へお出かけ中』インタビューシリーズ、他記事はこちら

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