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『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』 今西亨(キャラクターデザイン)インタビュー【前編】

 目覚めるとMMORPGで自身が使用していたゲームキャラの姿のまま、異世界に放り出されていた「アーク」。その姿は、見た目が鎧、中身が全身骨格という”骸骨騎士”であった。
 ──正体がバレたら、モンスターと勘違いされて討伐対象になりかねない!? アークは目立たないよう傭兵として過ごすことを決意する。だが、彼は目の前の悪事を捨て置けるような男ではなかった!
 現在放送中のTVアニメ『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』。本作のキャラクターデザイン・総作画監督を務める今西亨に、キャラクターデザインを描くにあたって意識したことを中心に話を聞いた。



2022年6月11日(土)

●公式サイト
https://skeleton-knight.com/


作品のいいところを前に出す

――まずは本作に参加された経緯からうかがえますか。
今西 「スーパーカブ」の作業中に、プロデューサーから「キャラクターデザインのオーディションを受けませんか」と声をかけられたんです。ただその時は「スーパーカブ」もなかなか大変な状況だったので、「数合わせで呼ばれただけだろう」と思っていて。オーディション時は「受からないだろうな」と気楽に自由に描いたんですね。そうしたら、それが良かったのか受かってしまって……(笑)。
――それは驚きですね。
今西 僕が最初に提出したものはけっこう自分本位のキャラだったので……どうしようかなと。しかも、本番のデザインを起こすにあたっては、「マンガ版のキャラに寄せる」というようなお話もあったんです。でも、作品を読んでみると、原作のキャラもすごく魅力的だと思って。なので、最終的には(キャラクター原案の)KeGさんと自分のイメージを混ぜた感じになっています。そういう意味では、正直オーダーに反する方向へ行ってしまったかもしれません……。僕の好みがかなり反映されたデザインだと思います。
――なるほど。今西さんは原作も読まれて、『骸骨騎士様』という作品にはどんな感想を抱きましたか。
今西 あまたある異世界作品の中でも王道を行っているなと。骸骨のフックがあるにしても、今はちょっとひねっている作品が多い中で、きちんと悪者を倒す勧善懲悪になっている。そこが第一印象でした。
――その王道という印象は、作品を手がける中でも変わりませんでしたか。
今西 はい。ただ今回シナリオ打ちにも参加させていただいたのですが、小野(勝巳)さんの考えを聞いていくうちに、あらためて「なるほどな」と思ったところが多々ありました。というのは『骸骨騎士様』たるアークのキャラ感をわかりやすく、的確に前に出されている感じがして、とても勉強になる打ち合わせでしたね。

パールのような鎧に

――キャラクターデザインの作業について、具体的におうかがいします。主人公のアークはいかがでしたか。
今西 鎧はアニメ用に簡略化させてもらいました。それでも(スタッフからは)「線が多い」と言われてしまいましたね(笑)。鎧は僕がまとめた感じではあるので、自分としては気に入っているのですが、原作ファンの皆さんがどう思っているのかは少し怖いところですね。
――アークの鎧の処理は最終的には撮影側のお仕事になったとのことですが、今西さんの意見が反映されたそうですね。
今西 ええ。もともと撮影処理を乗せたいなと思っていたんです。白い鎧ですが白だけではなく、いろいろな色が乗って、ツルっとした感じになればいいなと。これを現場ではパール処理と呼んでいて、ピンク色などを乗せてもらいました。真珠の一番明るい部分にポイントでハイライトを入れたりもしていて、撮影処理はかなり練りましたね。でも、すぐに完成形に近いものを出してもらえて、早々に固まったと思います。ありがたかったです。
――ちなみに、鎧は動かしづらかったのでないですか。
今西 そうですね。参考を1枚だけ描いたのですが、とくに肩を上げるのが難しいです。どうしても干渉してしまいますから、よくリテイクが出ていました。ただ、よく動くシーンに関しては3Dを使わせてもらいましたので、作画的なカロリーはだいぶ抑えられていたと思います。
――アークの3Dの出来はキャラクターデザイナーから見ていかがでしたか。
今西 すごくよかったです。何よりも3Dがなかったら、現場がとんでもないことになっていただろうなと思います。芝居についても、最初のモデルのときに「こうしましょう」と何となく伝えたぐらいで、全然問題なくって。むしろコミカルな動きもしてもらって助かりました。1話でバタバタとした面白い動きがあったのですが、もうその時点で「これは大丈夫だ。よかった」と安心していましたね。

表情のある骸骨

――アークの骸骨姿についてはいかがでしょうか。
今西 最初に提出した設定では、もっとコミカルにしていたんですよ。目がギャグのようになったりね。今もコミカル感がありますが、骸骨の形状は崩さないようにしているんです。骸骨の形のままで、表情をなんとなく変えるようにしていて。
――そんなことができるんですね。
今西 たとえば上を向いたらバカっぽく見えるじゃないですか。下を向いたら怒っているように見えたり。
――言われてみれば、そんな気がしてきます。
今西 正面から普通に見るとタレ目で笑っているように見えますし、なおかつホラーな感じもあってね。じつは幅広い表情感があるんですよ(笑)。
そういったことを意識したのは、小野さんが途中から参加されて、「骸骨は骸骨の形のままやった方が面白いんじゃないか」と提案があったからなんです。僕も「たしかに」と思って。
――なるほど。デフォルメしてしまうと骸骨キャラクターである意味も薄れてしまうかもしれませんね。
今西 そうですよね。骸骨の状態で何かをするのが面白いポイントになったのかなと。
――総作画監督として表情を修正するとき意識されたことはありますか。
今西 骸骨は、単純に描くのが難しいようなんです。とくに口のあたりですね。歯の本数なんかも間違ってあがってくることもあって、やっぱり骸骨は難しいんだなって。しかも喋ると顎がガタガタと動くので、口パクも大変で。そこを思い知らされました(笑)。

ポイントは胸の「上」の紐

――アリアンについて、苦労されたポイントなどはありましたか。
今西 アリアンは意外と特徴を付けるのが難しいキャラだったんです。悩んでいたのですが、前髪の跳ね方について、原作からインスピレーションを得まして。ここは原作のKeGさんも意識して描いている気がしたので、そこでキャラ付けができればいいなと。ここはマンガではオミットされている部分なんですよ。
――なるほど。たしかに、漫画版は束感のある髪ですが、KeGさんの絵だと少し跳ねがありますね。アリアンのチャームポイントはどこだと思っていましたか。
今西 うーん……。胸の紐でしょうか。たとえば(『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』の)ヘスティア様は胸の下側に紐がありましたよね。でもアリアンは上にあるタイプなんだなと。それを意識して紐をセクシーに見せようと頑張りました。胸にはだいぶ意識がありましたね。
――あの上にある紐によって、視聴者の視線を誘導しているんですね。
今西 そうです。どれぐらい効果的に見せられたのかはわかりませんが、感覚として紐が張っていれば(胸の大きさで引っ張られているような)キツイ感じを出せるんです。
――紐が胸に食い込んではいないようですね。
今西 そこまで行ってしまうと、ちょっと下品に寄ってしまうかなと。それが嫌いなわけではないですが、今回はあくまで上品なものを目指しました。それに彼女はエルフでもあるので、ムチムチだとエルフらしくないですからね。

自分の色を出せた作品に

――瞳の処理にこだわりはありましたか。
今西 じつは人間とエルフと獣人で瞳の感じを変えようという話があったんです。ただ作画で差を出すのは難しいので、色で変えようかなと。であるならば、真ん中の部分を黒くしてしまえば、あとは色の置き換えでどんなふうにも見せることができるなと思ったんです。エルフだと瞳孔が結構目立つのではないかと思ったので、その黒を立てるような色にしてもらっています。
――パーツ分けの指定を作画でされたんですね。そのほか表情や顔のパーツはいかがでしたか。
今西 どうなんだろう……。だいぶ僕の描きやすいようにやっていると思いますね。
――たしかに今西さんらしさが出ている印象を受けました。
今西 以前、キャラクターデザインを経験してきた先輩から受けたアドバイスがあるんですよ。それが「総作監をやっている内に、結局は自分の手癖になってしまうから、(キャラクターデザインに)最初から自分の色をある程度入れておいた方が後々楽だよ」って。どれだけ最初のキャラ表で、クライアントからOKをもらうために揉んでいっても、総作監のときには自分の手癖になってしまうから(笑)。それから「僕の色を出していいんだ」と思うようになったんです。
――たしかに自分が描いた設定が奇跡の1枚だったら困りますよね。
今西 自分が似せられないという事態になりがちですから(笑)。『骸骨』に関してはかなり自分のやりたいようにやらせてもらったという感覚はあります。だからやっていて楽と言いますか、描き甲斐がある楽しい作品でしたね。

インタビュー後編はこちら



『骸骨騎士様、只今異世界へお出かけ中』インタビューシリーズ、他記事はこちら

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