『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』 今西亨(キャラクターデザイン)インタビュー【後編】

『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』 今西亨(キャラクターデザイン)インタビュー【後編】

『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』 今西亨(キャラクターデザイン)インタビュー【後編】

 目覚めるとMMORPGで自身が使用していたゲームキャラの姿のまま、異世界に放り出されていた「アーク」。その姿は、見た目が鎧、中身が全身骨格という”骸骨騎士”であった。
 ──正体がバレたら、モンスターと勘違いされて討伐対象になりかねない!? アークは目立たないよう傭兵として過ごすことを決意する。だが、彼は目の前の悪事を捨て置けるような男ではなかった!
 現在放送中のTVアニメ『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』。本作のキャラクターデザイン・総作画監督を務める今西亨に引き続き話を聞いた。

2022年6月17日(金)


■真っ赤っ赤のチヨメ

――前編から引き続き、キャラクターデザインについておうかがいしていきます。チヨメを描くにあたって気をつけたことはありましたか。
今西 じつはそれほどないです(笑)。パーツの多いキャラは、そのパーツをちゃんと描いていけば似るんですよ。髪のかたちも特徴的で、鉢金があって、獣耳もあって……。ここまであったら誰が描いても似るんじゃないかと(笑)。だから描いていてすごく楽しかったキャラですね。
そんななかでも、とくに気を付けたのは、なるべくハイライト(光が特に強く当たる部分)でキャラを作ろうとしたことです。黒髪のキャラだったので、ハイライトで輪郭を多めに付けることで立体感を出せればと。黒で潰してしまうと、せっかくパーツが多いのに、立体感が出なくなるんです。あと鎧も黒いので、こちらも全体にハイライトを入れています。
――ハイライトによって質感を表現しているんですね。
今西 そうですね。普通に描くと(影を指定する)青い線の方が圧倒的に多いのですが、チヨメに関しては(ハイライトを指定する)赤が多い。全身真っ赤っかになってしまったなと(笑)。ちなみに、ゴエモンはチヨメとパーツがほぼ一緒なんですよ。髪型なども一緒です。
――たしかに言われてみるとそうですね。
今西 だからゴエモンも、あまり苦労しなかったキャラでした。描きやすかったですね。

■モブでもキャラクターデザインを作る

――ポンタはいかがでしょうか。
今西 ムササビ想定なので、意外とそれっぽくなるんです。シルエットも塊として付けやすかったですしね。普通の犬や猫よりもずっと楽でした。
――小動物特有のモフモフ感が良く出ていた印象を受けましたが、そのあたりは気を付けていたのでしょうか。
今西 尻尾をモフモフさせてほしいとの注文があったので、そこは意識していましたね。毛先にギザギザを付けて、撮影処理をかけてもらって、モフモフ感を表現したつもりです。柔らかく見せられればいいなと思っていました。
――サブキャラクターについてもおうかがいできればと思います。サブキャラクターデザインを担当された井上英紀さんとの役割はどのように分けられていたのですか。
今西 井上さんには主に悪漢とエルフの少女をデザインしていただきました。特にモブの悪い男たちについて、井上さんはシャープなキャラを描くというイメージがあったんですが、イッちゃったキャラもすごく味があるんだなという発見がありました。大先輩ですし、とてもうまい方なので僕が言うのも烏滸がましいのですが、やはり何を描いてもさまになるといいますか。モブでもちゃんとキャラクターデザインを作っているので、どのキャラも使い捨ての感じがしないと思うんです。そこがこの作品の特徴かもしれません。
――モンスターデザインの長森(佳容)さんについてはいかがでしたか。
今西 めちゃくちゃいいですよね。(第2話に登場する)ジャイアントバジリスクなんて「ああ、たしかに原作通りだな」と思える実在感があって、驚かされました。

井上英紀氏によるエルフの見張り番

長森佳容氏によるジャイアントバジリスク

■省略の難しさ

――さまざまなキャラクターがいますが、今西さんが印象に残っているのは誰になりますか。
今西 小野監督から一番注文があったのはダンカなんです。そういう意味では一番印象に残っていますね。「カッコ良くしてほしい」との要望があったのですが、うまくやれなかった反省があります。小野さんのリクエストに、おそらく応えられなかったのではないかと。また、全身についても(参考にしたマンガ版より)鎧部分を多めしています。「軽戦士という感じを出してほしい」とお話があったんです。難しかったですね……。あとはやっぱり、フンバが印象に残っています。
――キャラクターデザインを拝見すると、真ん中の舌を出した表情が、彼らしいですね。
今西 でもこれは急遽足した表情なんですよ。最初にこれ無しで提出をしたら、制作プロデューサーの上間(康弘)さんに「このままだと普通のカッコイイ兄ちゃんに見えてしまうかも」というお話を受けて、やばい感じの表情をひとつ追加したんです。
――今西さんは、こういったおじさんキャラを描くのは好きなのでしょうか。
今西 好きですね。皺が多いと似やすいというのもあるんですよ。皺が減れば減るほど、どんどん難しくなっていく感覚があります。だからフンバも似るタイプのキャラクターですね。
あとは……1話に出てきたリタとローレンも好きなキャラクターです。「この子は絶対にヒロインだろう」と思っていたのに全然違いましたね(笑)。気合を入れて描いたキャラではありますが、「服のパーツがよくわからない」と怒られたキャラでもあります(笑)。服を破かれるので、どこがどういうパーツになっているのか。破かれるのであれば、もう少しちゃんと描いておけばよかったという反省があるキャラです。
――女性キャラクターでは、ユリアーナの登場頻度が高くて裏ヒロイン感がありました。
今西 ユリアーナは……。反省点があるとすれば、ちょっと省略しすぎたかなという感じがします。ただこれ以上どう描けばいいのかわからなくて……。横で『ウマ娘( プリティーダービー)』の制作をしていたじゃないですか。あの衣装の細かさはハンパじゃないので、もうちょっとやってもよかったのかな、と思います(笑)。

■スリットがアークの目なんだ

――総作画監督と作画監督の作業についてもうかがいます。芝居や表情で修正を入れたり気を付けたところを教えてください。
今西 前編でも少しお話しましたが、アークの鎧が、カロリー的にはメインだったと思います。鎧は白と黄色の2色で塗られているので、そこを適当に描くとすぐに分かってしまうんですよ。それと、(アークの兜の)目のスリットも適当に描くととんでもないことになります。
――どのあたりが難しいのでしょうか。
今西 まずスリットが平行ではないだけで、すごく崩れて見えてしまうんです。最初は表情がないので作監修が楽だろうと思っていたのですが、とんでもなかった。このスリットは全部修正を入れないと、どうにもならなかったです。スリットがアークの目なんだなと。
――なるほど。アクション面はいかがでしたか。
今西 けっこう撮影側にご苦労を強いた気がします。たとえば瞬間移動するときに風がフワッと出ますよね。あれは最初、作画で描く話だったのですが、ラフ原のダビングで撮影監督の山本(聖)さんが付けてくれたエフェクトが、作画的ですごくよかったんです。「もうこれでいきましょう」となって、お願いしたことがありました。炎もガッツリとエフェクト作監を入れていなかったので、だいぶ簡略化していたところを、撮影さんにいろいろと足してもらいました。かなり頑張っていただいて感謝しかありません。
――『骸骨騎士様』を手がけたことで、新たに知見を得たことはありましたか。
今西 今回は総作監としての作業でしたから、原画のみんなは楽しそうだなと思ったりしました(笑)。今後アニメーターとしてやっていくにあたって、そこは何とかしたいなと思っているところです。
――それは原画にも関わりたいということでしょうか。
今西 はい。まさに今はその気持ちなんですよ。原画で自分がやりたいものを画面に出すという作業がやってみたくなりました。藤本(さとる)さんの話数(第9話)を見ても、楽しそうですよね(笑)。ああいう、各話について最初から最後まで面倒を見る、みたいなこともやってみたいです。それも『骸骨騎士様』が楽しい作品でしたから、そんな気分になっているのかもしれませんね。

2022年5月17日 阿佐ヶ谷ファミリーレストランにて



『骸骨騎士様、只今異世界へお出かけ中』インタビューシリーズ、他記事はこちら

公式サイト
https://skeleton-knight.com/