STUDIO KAI 櫂

TVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』放送終了記念!
アニメーター&制作陣による後半話数座談会

好評のうちに幕を閉じた『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』。本取材ではアニメーターのハニューさんと坂本俊太さんに、ご自身が携わった第10話、第12話、第13話を中心に振り返っていただいた。
また、制作プロデューサーである増尾将史さん、制作デスクの金子拓矢さん、制作進行の鈴木伽奈さん(第10話担当)、高崎慎さん(第12話担当)、設定制作の南幸大さん(第13話のライブシーンも担当)にも同席いただき、制作当時の苦労もあわせてうかがった。

※編注:高崎慎の高崎は、はしご高と山へんに立+可

2021年4月7日(水)

●公式サイト
https://anime-umamusume.jp/


キタサトコンビにつられて

――第10話からお話を聞かせてください。ハニューさんは作画監督を担当されていますね。
ハニュー とにかくツインターボが走る作画がすごかったんですよ。
――あそこはぐっとくるシーンでした。
ハニュー 全原画(※1)だったんですよね。これは、ほかの人に(第二原画として)清書してもらっても線が拾えないなと思って、急ぎ修正を入れてご本人に戻したのを覚えています。

(※1)動画が入らない原画のこと。原画マンが動きをコントロールする手法のひとつ

――それぐらい難度が高い作画だったのですね。ツインターボ以外で印象に残っているシーンはいかがですか。
ハニュー モブをいっぱい描きましたね。ライブの観客を全部やってくれと。第3話でも初詣のシーンをやっていたのですが、やはり大変な作業ですからね。でも、「キタサト(キタサンブラックとサトノダイヤモンド)のいいところがありますよ!」と言われて……、じゃあ仕方ないかと(笑)。
――それにつられてしまったんですね。
ハニュー でも、あそこも苦労はしましたね。なんとかいい泣きにしたいなと思ってやっていたのですが、そのあとで、すごくいい表情のテイオーが来たから、プレッシャーがすごかったです(笑)。
――第10話は終盤に差し掛かる状況で、バタバタしていたのではないですか。
鈴木 じつは第11話以降に比べると落ちついてはいたんです。だから丁寧には作れました。大幅に崩れることなく、一定のクオリティは保てたと思います。ただ、すごく大事な話数だったので、プレッシャーは大きかったです。
――ハニューさんのご活躍についてはいかがですか。
鈴木 レイアウトの数がものすごく多かったんです。振られた数が多いにも関わらず、言ったスケジュールどおりにあげてくださるので、本当に第10話Bパートの要でした。
ハニュー 延びるときも、「これくらいの日数がかかるけど、なんとかなるはずだ」と逆算して考えたつもりです。
鈴木 キタサン(キタサンブラック)の泣きのシーンも、すごく感情を込めていて次のカットに繋ぐんだと描いてくださって、本当にいい流れができていたと思います。
ハニュー うれしいですね。増尾さんは褒めてくれないので(笑)。
増尾 褒めてますよ! ハニューさんにも坂本さんにも、「すごくよかったですよ」と言いましたよね!

メジロマックイーンの涙

――ちなみに、原画マンの振り分けは増尾さんがされていたのですか。
増尾 基本的に僕がやりました。シナリオ打ちの段階で誰にお願いするかは決め込んでいたんです。そのうえで、第1話から第3話でやっている人たちが、第8話、第10話、第12話と入るようにローテーションを組んでいたんです。あ、でも坂本さんだけ、大変なところが2回連続だったのですが……。
――(笑)。
増尾 坂本さんは第12話のBパートの作監をやっているんですが、後半の話数で半パート作監をしているのは、坂本さんしかいないんですよ。さらに坂本さんには(メジロマックイーンが)泣くところのレイアウトもやってもらって。そこも気合を入れてもらって、すごくいいシーンになりました。
――せっかくですので、第12話についてもう少し詳しくおうかがいできればと。メジロマックイーンが繋靭帯炎と診断され、雨のなか必死に走ろうとする前後は、どのような思いで作監されたのですか。
坂本 振られたときは、実はテイオー(トウカイテイオー)とマックイーンの関係性をよくわかっていなかったんです。だから泣きの芝居はとても悩みました。それで、アフレコの演技を聞いて、感情移入しながら描いたんです。あの演技には本当に助けられました。
――ではMachicoさんと大西(沙織)さんの演技に触発されながら、あのシーンは描かれたのですね。それぐらい気持ちが入らないと作画作業はできないものなのですか。
坂本 はい。とくにマックイーンは普段あんな感じにならないじゃないですか。だから、どれくらい顔を崩すべきなのか。そのあたりの塩梅は演技を聞きながら考えたんです。
高崎 マックイーンの泣き芝居の原画は、アニメーターの井上(英紀)さんが他作品を終えて入ってくださったんです。井上さんはリアル寄りの芝居がお好きだったので、演出に対して「ここはリアルだったらこうなる」といった意見をたくさんいただいたんですよ。その方向性で描いていただいて、そこからさらに坂本さんが修正を入れてくださって、アニメーションとしてとても熱くなった気がします。
坂本 井上さんからいただいた原画はけっこうラフ目だったんですよね。
増尾 それでも、期間がないなかでしっかり修正を入れていただいて助かりました。
――井上さんと坂本さんの共同体制がうまくいったんですね。
高崎 さらに、髪のほつれや、濡れた質感も丁寧に入れてくださって、それもあってフィルムの質が一段上がったのかなって思います。
――坂本さんとしては、そのあたりを気にされていたのですか。
坂本 そうですね。(キャラクターデザイン・総作画監督の)椛島(洋介)さんに1カットだけ、ガイドとなるような細かい指示をいただいたんですよ。それにあわせて修正しました。マックイーンが雨の中走るシーンの髪の影は、今回特別に濃くしているんです。雨に濡れている感じで、ハイライトの下に影を付けています。
――特別なシーン感があるということですね。
ハニュー あそこ、めちゃくちゃ影付け変わりましたよね。一気に異質なものになった気がします。
高崎 さらに、Bパートのマックイーンが雨のなかで走っているシーン以降は、増尾さんのご意見で被写界深度を浅くしたフィルムにしたいとお話があって。
――増尾さんは、演出面にもご意見されていたのですか。
増尾 このシーンについてはそうですね。キャラを印象的に浮き立つ感じにしてもらって、なおかつ背景がボケているようにしたいと。
――それはどういう理由で。
増尾 雨感を出したかったんです。さらに常にキャラクターに目が行ってしまうような工夫をしたかった。そうしたら及川(啓)監督が「いいよ!」と。
高崎 そういった各所のアイデアや意見がマッチした、いい画面になったなと思います。
――ほかに坂本さんのご活躍についてはいかがですか。
高崎 Bパートの広い範囲やってくださったので助かりました。それと期間も短かかったので、ほかのパートも手伝ってくださったのもあって、ひとりで半分以上見てくださったと思います。
本間 第12話の話ではないのですが、私も坂本さんに2回助けていただいてるんです。ひとつは、第8話でマックイーンのカメラが回り込みながら走るカットがあって、それを坂本さんのところにもっていって、「よろしくお願いします」と。そのときに、どこで区切れば複数人で作業してもうまくカットがつながるかと、割り振りの線引をしていただいて。もうひとつは、第13話でも3Dでビワハヤヒデの回り込みがあったとき、坂本さんにお願いしたんです。本当に助かりました。
坂本 もうやらなきゃダメなんだろうなと(笑)。結局誰かがやらないといけないのなら、自分が早いうちに、と思ったんです。

「テイオーが描けてよかったよ」

――第13話はハニューさんも坂本さんも作画監督として参加されています。こだわりをお聞かせいただけますか。
ハニュー とにかく顔を崩したくなかったのですが、いっぽうで間に合わせないといけない。もう無我夢中でした。みんなで一丸となってやりきった感じです。
――この話数の進行担当は本間さんで、南さんがライブシーンを担当されていますね。
本間 第8話のリテイク作業中に第13話が動き出して、バタバタしていきました。手が空いた人から第13話に入っていただいて、いつ誰が手空きになるかわからなかったので、ほかの話数の進行さんに、いまどうですかと確認し、タイミングを計りつつやりました。
――ライブシーンはいかがでしたか。
南 第13話本編とは完全に別スケジュールなんですよ。ただ、他話数との兼ね合いもあって、作業者のスケジュールを全部確認しつつ、作業時間を最大限工夫して回していました。
――ライブは特殊な制作法だったのでしょうか。
南 3Dモーションガイドを出して、それを作業者に渡していました。このやりかたは以前も別作品で経験があったので、飲み込みは早かったと思います。かつ、そのときよりも技術力はあがっていて、3Dの素体がいい感じになっていたので、作画さんはやりやすくなっていました。
――では、わりとスムーズだったのですね。
南 ただ、枚数がすごいので、そこがネックでしたね。最終話のテンションでやっていただいたので、どうにかなった印象です。
ハニュー じつは事情が重なって、自分のほか、同じく作画監督を務めた福田(佳太)さん、メインアニメーターの宗圓(祐輔)さん、中島(順)さん、そして椛島さんの五人で、ある1カットをやっているんですよ。ピンチヒッターとして第二原画を担当したんです。
――結果としては夢のようなカットですね。
増尾 それで最後に椛島さんが、「テイオーが描けてよかったよ」と言ってくださって。
――かっこいいですね(笑)。
南 ピンチヒッターとしてお願いしたのに、そんなふうにおっしゃっていただいて……本当にありがたかったです。
増尾 せっかく南が話しているので、彼の制作として以外の仕事のことも紹介させてください。実はレース実況の文章を書いているんですよ。
――あの実況の熱さで、ぐっと来た方も多かったのではないかと。
南 レースシーンはカッティング後じゃないと尺が決まらないんです。それで自分のほうでまとめて、Cygamesさんにご監修いただいたものをアフレコに間に合わせていました。
――もとになったレースの実況を下地にされていたのですか。
南 はい。聞きながらやっていました。
増尾 南がいちばん好きな実況はなんだったの。
南 最終話ですね。あれはレース後の実況を自分が考えて書いたんです。
――レース中はもとになった実況がありますが、その前後はないですものね。
南 それに史実のレースだと、テイオーが勝つと(実況側は)思っていないんですよ。
――なるほど。そのあたりの調整もされているのですね。
増尾 ほかにも実際の馬の立ち位置を作画さんに伝えたり、モブウマ娘の勝負服と身体を入れ替えたり色を変えたり……。
南 ときには発注ミスもあったりして……大変でした。
――モブウマ娘の数も多かったですよね。
南 でも、第2期で追加したのは10体だけですよ。
ハニュー いや、それは多いと思います(笑)。

泣く泣く削った(?)ファンファーレ

金子 第13話で思い出深いことですと、椛島さんがデスクとしてやるべきことを教えてくれたんですよ。
――えっ? 椛島さんはアニメーターですよね。進行面についてのご教授があったのですか。
金子 はい。第12話までの自分のデスクとしての判断を、反省点も踏まえて総括しました。自分も今回が初のデスクで、いままで自分の話数のことしか考えず回していたので、全体を見るのに苦労していたんです。進行をやっていたころなら、自分の前話数の進行をつついて、「早くして」なんて言うだけなのですが、その進行と相談しながら、うしろの進行に対してもケアをしないといけない。とくに最終話では、かなりテンパってしまって。
逆に「俺がここからここまでやるから、ここはスケジュールにあわせられるように原画を集めてくれ」といった具体的な指示までいただいて。それでどうにか乗り切れたんです。
――それは椛島さんの懐の深さを物語るエピソードですね。ほかに第13話で印象に残っていることなどありますか。
金子 カッティングの時にひとつ心残りがありまして……コンテでは、レース直前にファンファーレが流れて旗を振るんですけど、そのカットが欠番になったんです。
――金子さんにとっては大事だったんですね。
金子 競馬好きとして、とくに有馬記念(作中では馬の点は2つ)であのシーンがないのは、ちょっと残念で……。カッティングのとき、及川監督に最後まで「残してほしい」と。でも、「ごめん、これは削らないといけなくて……」と。
――泣く泣くのカットだったんですね。
金子 いえ、わりと真っ先にカットって言ってました……。
――泣く泣くでもないんですね(笑)。
南 尺が完全にオーバーしていたんです。最終話はカット数も多くて欠番がかなりあって、1分ちょいオーバーしていた感じでした。ライブは絶対削れないですしね。

積み重ねとドラマ

――ここからは趣向を変えまして、「第2期のここがよかった」といったところがあれば、お聞かせいただきたいです。
ハニュー ストーリーとしては、第2話に驚かされました。こんな早くから泣かしに来るんだって(笑)。第2話からもう毎週ほぼ泣きっぱなしでした。
――たしかに展開が早いですよね。
ハニュー あとは、第7話のエンディングもずるいなと。
――幸せそうなライス(ライスシャワー)ですね。
ハニュー 設定上、勝負服を着られるのも限られたウマ娘しかいないわけですから、あんなにうれしそうなのもわかるんです。そこがいいなと。
――では、アニメーションよりもドラマ面に感動が多かったのですか。
ハニュー ドラマ面も感動しましたし、自分が参加した作品でありながら、レースシーンにも驚かされました。普通に走っていて、いきなりカメラが回りこんだりするじゃないですか。「えっ?」て。アニメーターとしては、「こんな大変なことして大丈夫なの?」と(笑)。3Dモデルがあったとしても大変ですし、すごいなと思いましたね。
――そのレースシーンのプランは及川監督が考えていらっしゃるのですか。
増尾 そうですね。細かくもあるのですが、全話数通した決めごとという意味では、実際のレースのアングルはひとつふたつ入れようという話はしていました。
ハニュー 引きで多かったですよね。ターボ(ツインターボ)が回ってきたりして。
増尾 競馬ファンの方々は、ああいうところで納得感を持って見てくださるので、大切だと思っていました。あと第13話でわがままを言って、ドン引きさせたカットがありましたね。
――それは具体的にはどこなのでしょうか。
増尾 不良たちが「テイオーが勝ったら頭を丸める」といった3カットあとです。実況がそれぞれのウマ娘の名前を呼んでいく、1カットで全員が通り過ぎるカットですね。それをどうしても作りたいんだと言って。
――もともとは予定されていなかったのですか。
増尾 はい。(コンテの)素上りではなかったんです。でも、及川さんに入れてもらって、結果自分で言うのもなんですが、いいカットに仕上がったと思います。でも……全セクションから、お小言はいただきました(笑)。
原画もすごい複雑で助監督の成田(巧)さんも「こんなの全部紐解けないよ」と。
金子 原画担当者さんには、「1カットだけどうにか」とお願いして……。
坂本 いや、1カットって、単位としてはそうだけどね……。
増尾 数のマジックですね。
――坂本さんは第2期を振り返られて、どのように感じられますか。
坂本 自分が作業している話数以外って、やっているときはあまり詳しい内容はわかっていないんですよ。あとからできあがったものを観てすごく感動して、さらに、自分は競馬が全然わからなくて、資料で史実を調べたりして、そこでもう一度感動して。そういう行きつ戻りつがすごくよかったです。
――実際、反響を受けていかがでしたか。
坂本 オンエアを見るまで、どれくらい反響があるかわからなかったけど、ほっとしました。作業をしていたときは自分でもマヒしているんですよ。第12話も何回も見ているからあまり泣けなくて。今日がオンエアじゃないですか(本取材は2021年3月22日に行われた)。どういう反響になるのか、ドキドキしてます。
ハニュー 自分もやっぱり第10話をやっているときは泣けなかったんです。でも、第1話から第9話まで本放送を全部見て、ターボの泣き叫びを聞くと「やばい」ってなって……。そんなふうに、積み重ねを経て感動が高まるドラマになったのかなと、いまは思っています。

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